岩石のプレパラート(岩石薄片)の作成 前編
 ~スライドガラスに貼り付けるまで~

作業日:2022.05.21
 前回、DIY岩石カッターで岩石チップを作成することができました。(⇒こちら参照)今回は、岩石チップの片面を磨いてスライドガラスに貼り付けます。前回作成したチップは以下の写真です。一番左端の小さいものを使います。厚さが1.5mm程度で早く作れそうです。また、白い脈が入っているので面白そうです。


 岩石カッターで作成した岩石チップをスライドガラスに張り付けるまでの基本工程は昔から同じと思います。

1.岩石チップを作る
2.片面を磨く
3.スライドガラスに張り付ける。

 私の場合は、日高山脈博物館や山の手博物館の岩石薄片講座で教わった方法を参考としています。研磨で使用する機材や、使用する研磨粉の粒度は、たぶん、これが正解というものはなく、用途・慣例や趣向により異なると思います。ご了承ください。

用意したもの

部品価格調達備考
鉄板失念ホームセンター10年以上前に購入したもの
ガラス板
 260mmx160mm 5mm厚
2041円ケニス オンラインショップ販売終了品
2014年購入
花崗岩の板失念ホームセンター10年以上前に購入したもの
スライドガラス失念ネット通販一箱100枚入り。10年くらい前に購入したもの。
エポキシ接着剤0円自宅にあったものボンドEセット
ダイヤモンド砥石 300番失念ネット通販かなり前に購入したもの
研磨粉 800番
※カーボランダム
0円いただきもの 
研磨粉 1500番
※アランダム
3791円/1kgケニス オンラインショップ販売終了品
2014年購入
水を入れるカップ0円お菓子が入っていたケースを流用 
ホットプレート5000円ネット通販中古

※ガラス板:
 仕上げ研磨に使います。厚さ0.03mmまで削るため、ガラス面はほぼ完全な平面である必要があり、岩石薄片作成用のガラス板を使っています。ホームセンター等で売っている通常のガラス板を使う場合は、2枚買って、研磨粉で擦り合わせて完全な平面を出す必要があるかと思われます。
※エポキシ系接着剤:
 岩石チップとスライドガラスをくっつけるのに使います。昔はレーキサイドセメントを使っていました。博物館の岩石薄片講座において、エポキシ系接着剤でよいことを知り、以来、使っています。ボンドEセットである必要はないです。
※ダイヤモンド砥石:
 研磨粉と研磨板が不要で、かつ、研磨スピードが早く、力を入れなくてもサクサク削れます。小型で出し入れも楽です。ただ、岩石チップに削り傷が付きやすいので、仕上げ研磨には向かないと思っています。


磨く前の状態


 磨く前の状態です。この面を整えてスライドガラスに貼り付けます。
 今回は岩石カッターで切断しています。カッター痕は見えますが、切断面には目立った凹凸はなく平滑ですので、手作業で平面を作る必要がなく、だいぶ楽です。

岩石カッターの切断痕を消す

 岩石カッターの切断痕が残っているので、これを、300番のダイヤモンド砥石で削りとります。切断痕の凹凸は僅かなので300番で数分磨けばとれます。

削り取った後の写真は以下です。切断痕はなくなり、手で触るとスベスベしていますが、表面はザラついている状態です。


顕微鏡で拡大したときに削り跡が見えないくらいツルツルになるくらいまで磨く

 次に、鉄板の上で800番の研磨粉と水を付けて磨きます。研磨粉はカーボランダムを使っています。ザラつき感がなくなったら、次に、1500番のアランダムで磨きます。


ガラス板に張り付く感じが出てきます。乱反射がなくなり、鉱物の透明感が感じられるようになってきて、鉱物の結晶が綺麗に見えるようになります。


岩石チップを乾かす

 次に、岩石チップを乾かします。スライドガラスに貼る面を上にしてしっかり乾かします。水分が残っていると、接着面に気泡ができたりして接着が不完全になり、薄く削っていく過程で剥がれてしまいます。ホットプレートで100℃くらいで1時間ほど乾燥させました。調理用のホットプレートを使ったこともあるのですが、温度のバラつきが大きく失敗しやすかったので、下写真のホットプレートを中古で購入して使っています。乾燥が終わってもホットプレートで熱し続けておきます。ホットプレート上で岩石チップにエポキシ接着剤を塗る作業をするので、ホットプレートの天板は、汚れないようにアルミ箔で包んでおきます。


スライドガラスに接着する

 次に、岩石チップとスライドガラスをエポキシ接着剤でくっつけます。まず、エポキシ接着剤の準備。2つの液を混ぜておきます。混ぜたら、ホットプレート上の岩石チップに接着剤を満遍なく塗ります。その上から、スライドガラスを片側から被せるように岩石チップの上に乗せます。スライドガラスを軽く押しながら円を描くように動かすと、中に入った細かな気泡が岩石チップの外側に移動して抜けます。気泡は見るとわかります。ちょっとピンボケですが、動画をとりました。
 気泡を全て出した後は、そのまま10分~20分くらい加熱したまま置いておきます。エポキシ接着剤は常温だと固着に12時間程度かかりますが、100℃前後だと10~15分程度で固着します。

熱を冷まして貼り付け完了

 エポキシ接着剤がホットプレートのアルミ箔に付いてしまってちょっと汚くなってしまいました。まあいいか。熱を冷ましたら貼り付け完了です。次は薄く削っていきます。